利益が出たら考えるべき節税対策:手元に現金を残すための最適化戦略
はじめに:利益=自由に使える資金ではない!なぜ「利益が出た」と喜んでいられないのか?
試算表で大きな利益(黒字)を確認したとき、同時に意識しなければならないのが法人税の負担です。利益が大きいほど、手元に残る現金は少なくなり、翌期の運転資金や成長投資に使える資金が圧迫されてしまいます。
節税対策は、単に税金を安くすることではなく、合法的な枠組みの中で税金を支払うタイミングを調整し、会社の現金を最大限に有効活用するための「利益の最適化戦略」です。ここでは、利益が出始めた中小企業の経営者が、決算直前でも実行できる即効性のある対策を中心に解説します。
【即効性あり】期末直前でも間に合う!「経費」の最適化戦略
利益が出すぎている場合、今期の経費(損金)を増やし、課税所得を圧縮することが最優先です。
1. 少額減価償却資産の特例(30万円未満)の徹底活用
通常、固定資産は耐用年数に応じて費用化(減価償却)しますが、中小企業向けの特例を利用すれば、取得価額30万円未満の資産を一括で経費(損金)にできます。
- 適用要件: 青色申告を行う中小企業者等であること。
- 上限金額: 年間合計300万円まで。
決算期末が近づいたら、古くなったPCやサーバー、高機能なオフィス家具、業務効率化のためのソフトウェアなどを積極的に導入し、キャッシュアウトと同時に全額損金算入しましょう。これは、設備投資と節税を両立できる最も有効な手段の一つです。
2. 消耗品のまとめ買いと前倒し
翌期に使用する予定の消耗品(事務用品、インクなど)も、今期中に購入し、納品が完了していれば経費として計上できる場合があります。また、広告宣伝費や研修費など、サービスの提供を今期中に受けることで費用を前倒し計上することも検討しましょう。
ただし、単なる「積み増し」は税務調査で否認されるリスクがあるため、あくまで事業に必要な支出に留めることが重要です。
【長期視点】社長の手取りと会社の負担を最適化する「役員報酬」の見直し方
役員報酬は、会社にとっては損金(費用)ですが、社長個人にとっては所得(収入)となり、所得税・住民税が課税されます。このバランスの最適化は、重要な節税対策の一つです。
1. 定期同額給与の原則を守る
役員報酬は原則として毎月同額でなければ損金として認められず、変更できるのは、事業年度開始の日から3ヶ月以内が基本です。来期を見越した報酬額の検討を今から始めましょう。
2. 法人税と所得税のバランス
役員報酬を増やすと法人税は減りますが、社長個人の所得税・社会保険料負担が増加します。逆に報酬を減らすと法人税が増えます。
この「法人税の税率」と「社長個人の税率」を比較し、会社全体・経営者個人のトータルの手残りが最大になるポイントを探ることが大切です。
【守りの節税】万が一に備えながら税負担を軽減する「共済」の活用
将来のリスクに備えながら税負担を軽減できる制度を活用しましょう。
1. 倒産防止共済(経営セーフティ共済)の活用
これは、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための国の共済制度です。
- 最大メリット: 支払った掛金は全額損金として計上でき、月額20万円(年間最大240万円)、総額800万円まで積み立て可能です。
- 解約時の戻り: 40ヶ月以上積み立てれば、全額(100%)が戻ってきます。
この共済は、利益が多く出た年に一時的に積み立てて利益を圧縮し、将来的に解約して事業資金に充てるなど、節税と資金繰りの両面で柔軟な使い方ができる制度です。
まとめ:合法的な節税の実行には専門的な判断が不可欠
節税対策は「いつ」「何を」「いくら」行うかによって、その効果と税務リスクが大きく変わります。特に、税務調査で否認されやすい過度な保険の活用や不自然な経費計上を避けるためにも、実行前に専門家の判断を仰ぐことが不可欠です。
利益が出た今こそ、来期以降を見据えた戦略的な税務対策を一緒に始めませんか?