マーケットインは、市場や顧客のニーズを起点として、市場や顧客が必要とするものを提供するアプローチを言います。
つまり、あらかじめ市場のニーズを調査した上で、市場が本当に求めている製品やサービスを開発・販売していこうという考え方です。
まずは、顧客が「どんなものを欲しがっているか」「何に困っているか」などを徹底的に調査し、或いは、顧客の立場に立って、そのニーズを満たす製品やサービスは何かを考えます。
市場調査や顧客へのヒアリングを綿密に行い、そのデータをもとに製品やサービスの企画・開発を進めます。
もし市場調査に多くの時間と費用をかけられない場合は、自身が徹底的に顧客になりきって考える、或いは、身近で正直に意見を言ってくれる複数の人に意見を求めて参考にする、などの方法でも構いません。
1.売上予測が立てやすい
当然ですが、顧客のニーズに合わせて製品やサービスを提供するため、売れる見込みが高く、売上の予測は立ちやすくなります。
また、どのくらいの顧客にどのくらいの期間でどの程度売れるかを予測すれば、将来的な事業計画も立てやすくなります。
2.効果的なマーケティングが行える
事前の市場調査などで、ターゲットとなる顧客が明確になっているため、ターゲットを絞った効果的なマーケティングを行うことができ、それによってさらに売上を伸ばすことも可能になります。
3.失敗のリスクを軽減できる
そもそも市場や顧客の需要があるところに、製品やサービスを提供しているため、市場に受け入れられず無駄な投資に終わる可能性は低く、事業失敗のリスクを軽減できます。
1.競合との差別化が難しい場合がある
市場や顧客の既存のニーズに応えることになるため、競合他社と似たような製品やサービスになりやすく、差別化が難しい場合があります。
2.革新性の低下
顧客が想定していないような、革新的な製品やサービスは生まれにくいため、革新性は低下します。
革新性が低いと爆発的なヒットは期待できないかもしれません。
3.リサーチに時間とコストがかかる
マーケットインでは、事前に、市場調査や顧客へのヒアリングを行うことを前提としているため、製品やサービスを提供するまでに時間とコストがかかってしまいます。
従って、事前のリサーチにはなるべく時間とコストをかけないような工夫も必要になります。
プロダクトアウトは、自社の技術やアイデアを起点として、製品やサービスを開発する考え方です。
市場や顧客のニーズを起点として製品やサービスを開発するマーケットインとは全く逆の発想になります。
「自社にはこんな技術がある」「こんな面白いものが作れる」という発想からスタートし、その製品やサービスを考えます。
自社の技術力や強みを最大限に活かして製品やサービスを開発し、その後に市場の反応や売り方を考えます。
プロダクトアウトでは、既に顕在しているニーズに応えることよりも、潜在的なニーズを掘り起こすことを重視して、製品やサービスの開発を行います。
1.競合との差別化を図り革新的な製品・サービスを開発できる
自社が持っている技術やアイデアをもとに製品やサービスを開発するため、競合他社との差別化を図り、革新的な製品やサービスを生み出せる可能性が高くなります。
場合によっては、競合を寄せ付けない独創的な製品・サービスを生み出すことで、市場の独占も可能となります。
2.ブランド価値の向上を図れる
自社の強みを活かし、画期的な製品・サービスを生み出すことで、企業ブランドの価値の向上が期待できます。
特に新しい市場を切り開く製品・サービスは、消費者に強い印象を残し、ブランド価値の向上を図れます。
3.開発コストを抑えられる
既存の自社技術と自社の強みを活かして開発を行うため、事前のリサーチは不要であり、場合によっては、新しい機材の導入やスタッフの増員も不要となるため、開発コストを抑えることができます。
1.市場のニーズに合わず売上予測が大幅に狂ってしまう可能性がある
プロダウトアウトは、「売れるもの」ではなく「売りたいもの」を優先するため、市場のニーズに合致せず、消費者に必要とされないものを作ってしまい、売上に全く結びつかない可能性があります。
新規事業で失敗するケースは、大方がこのパターンです。
2.販売戦略がおろそかになる
「この製品・サービスは絶対に良いものである」「良いものであるから絶対に売れるはずである」という考えになりがちで、販売に全く力を入れず、おろそかになってしまうことがあります。
プロダクトアウトの成功例として有名なものに、「アップル社のiphone」と「ソニーのウォークマン」があります。
1.iphpne
2007年に登場した『iphone』は、プロダクトアウトの成功事例の代表格です。
iphoneが登場するまではボタンを押して操作する「携帯電話(ガラケー)」が主流でしたが、既存市場にはなかったPC機能やPDA機能を搭載した「スマートフォン」を開発し、全く新しい価値を市場に提供したことにより、その先進的なアイデアが全世界を魅了し、現在のスマートフォンが主流の世界を実現させました。
2.ウォークマン
「ウォークマン」とは、ソニーが販売するデジタルオーディオプレーヤーです。
家で音楽を楽しむのは当たり前だった時代に、「持ち運び可能な音楽プレーヤー」という新しい価値を市場に提供し、爆発的な売上を記録しました。
ウォークマンをつけて外出先でも気軽に音楽を聴けるようになり、若者を中心に高く評価されました。